「人と組織の成長を支援する」情報・サービスのご紹介
cts_clm_201504_01

集団凝集性と組織市民行動

伊藤克彦(株式会社HPT研究所 代表取締役)
人材・組織・経営-専門家コラム

 2019年の流行語年間大賞にラグビー・ワールドカップで日本代表を率いたジェイミー・ジョセフ・ヘッドコーチが掲げた「ONE TEAM」が選ばれた。7ヵ国15人の海外選手を含む31人が心をひとつにして快進撃を果たしたその活躍ぶりに日本中が熱狂、感動したのは記憶に新しい。

 

 この快進撃を生み出した「ONE TEAM」創りの取組みを日本企業も学ぶべきであるという意見が様々なところで聞かれた。まさにグローバル時代のダイバーシティ経営をラグビーというスポーツを通して体現した事例といえよう。

 

 人々の集団が集団らしくなり集団としてのまとまりが良くなることを示す概念として集団凝集性がある。フォーサイス(2006)はその特質を、魅力、一体性、チームワークの3つにまとめている。魅力とは、自分にとってその集団がどれだけ魅力的か、所属しているメンバーがどれだけ魅力的かといったことをいう。一体性とは、集団の持つ価値観が自分の価値観と似ているか、メンバー同士の価値観が似ていることからくる集団に対する安定感、拠り所感を指す。また、チームワークとは、集団の目標を達成するための意欲や態度、集団の目標に向かってメンバー同士が活発な交流をする様をいう。まさに、日本ラグビーチームはこの3要素が揃った組織としてのあるべき姿といえるかもしれない。

 

hpt202001 こうした集団凝集性を維持していくためには、困っている他者に手を貸す援助行動が重要になる。これは、向社会的行動(外的な報酬を期待することなしに、他者に利益をもたらすためになされる自発的活動)と呼ばれるもので、近年の社会心理学の研究テーマとして注目されているという(大森2018)。

 

 職場においても事前に予測できなかった仕事や問題が発生したり、誰の役割にも属さない仕事が発生したりすることがある。このような場合に所属するメンバーが進んで行動や対処しなければ職場はうまくいかない。このような組織における向社会的行動の代表的なものとして組織市民活動がある。略称としてシチズンシップと呼ばれることが多いようである。

 

 代表的な研究としてコールマンとボーマンの研究がある。彼らは、その次元を「対人シチズンシップ」「組織シチズンシップ」「仕事に対する勤勉な行動」の3つに分類している。対人シチズンシップとは、協力的な態度、取組みによって他人を支援する行動を指す。組織シチズンシップとは、組織への忠誠や規則やルール遵守を通して組織責任を果たす行動をいう。最後の仕事に対する勤勉な行動は、組織に於いて自らの役割を超えて行動することをいう。

 

 成果重視の目標管理が浸透している現在、こうしたシチズンシップの醸成が組織においては重要になってきているのではないか。事実、シチズンシップの高い社員は上司から高い評価を得やすいという報告もある。対人、組織に対するシチズンシップと仕事への勤勉さが周囲にいい影響を与えているのであろう。

 

 元来、日本人はこうしたシチズンシップの素養を身に着けてきたように思う。成果主義、職務重視の報酬制度が広がりを見せている昨今であるが、改めて、「ONE TEAM」から学ぶべきところが多いのではないだろうか。

 

 


 

hpt_katsuhiko.ito

 株式会社HPT研究所
 代表取締役 伊藤 克彦

 

 

 

1979年 株式会社リクルート入社、人材総合サービス部門で1000社を超える企業の採用、教育、人事処遇に関する業務に従事。その後、映像事業部門でプロデューサーとして教育映像コンテンツ制作他に携わる。

ダイエーの資本参加に伴って福岡ドーム事業に参加。主として法人営業部門を担当。リクルート復職後、広告局長、営業教育事業部門の責任者を経て、2002年独立しHPT研究所を設立、今日にいたる。

専門分野:組織変革、ビジョン・戦略構築、人事制度設計、教育制度設計、研修プログラム開発、マネジメント教育 他
広島大学教育学部(心理学科)卒

 


 

株式会社HPT研究所

経営の実行プロセスである「戦略」「業務」「人事」という3つの領域で、コンサルサービスを提供している。社名のHPTはHuman Performance Technologyの略。 人と組織の行動成果をいかに高め企業業績を向上させるかをテーマに様々な取組みを行っている。

■会社HP http://www.hpt-lab.com

 


 

バックナンバー(最近の記事)

 ◎これからの組織に重要なフォロワーシップ(http://www.kensyu.com/info/archives/4925
 ◎組織文化とマネジメントスタイル(http://www.kensyu.com/info/archives/4904
 ◎社員のキャリアデザインにおける企業の役割(http://www.kensyu.com/info/archives/4890
 ◎人生100年時代のキャリア理論への期待(http://www.kensyu.com/info/archives/4871
 ◎若いうちの苦労が人を育てる時代は終わったのか(http://www.kensyu.com/info/archives/4853