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後継者不足の時代

伊藤克彦(株式会社HPT研究所 代表取締役)
人材・組織・経営-専門家コラム

 今年3月に発表された株式会社リクルートマネジメントソリューションズ社の「昇進・昇格および異動・配置に関する実態調査2016」によると、昇進・昇格において部課長に求められる要件として、部長は、「戦略・革新」を構想し「実行」すること、そして「大局」をみて「判断」すること、課長は、「自職場を目標達成に向けてリード」することが求められているという。2009年に行った同じ調査結果と比較すると、部長では、「指導・育成・動機付け能力」「人間的魅力」「社内外のネットワーク形成力」、課長では、「職務に関するスキル・知識」「変化への柔軟な対応」という項目を選択する割合が上昇しているという結果であった。

 

 また、部課長の管理職としての問題点としては、部長では、「組織・事業の変革が担えていない」という点がトップで、2009年の調査と比較して18.5%上昇と大幅に増えている。また、4位の「環境変化や関連する社外のビジネス動向に視野・視界が向かず、内部マネジメントで手一杯となっている」も12.3%上昇していた。課長では、「上位階層に昇進・昇格しても、実務も行う管理者が多く、職務意識が変わらないが69.7%とトップで、半数以上の企業が「管理能力・専門性が期待水準に達しない者が一定数いる」と答えている。

 

choice 調査結果から浮かび上がる部課長の現状は、部長では、戦略的思考・実行力を求められながらも、目の前の業務に追われ視野教唆に陥り、部下に対する対応(指導・育成や動機づけ)を十分に行う余裕のない状況、課長では、プレイング業務に追われ、管理者としての職務意識の転換や能力形成がうまくいっておらず、能力的に未熟な状況といったところであろうか。

 

 こうしたことから推測される日本の各企業の中間管理職層の実態は深刻である。課長層を中心に管理者がプレイヤー化したことで、管理職層の役割がそれ以前よりも一段レベルダウンしているのではないかとすら思われる。これは、プレイヤー化だけの問題ではない。組織のフラット化や管理職補佐機能の弱体化、雇用の多様化を含めた職場の多様性の増加、組織構造における若年層の薄さや組織的役割経験が不十分な中での高齢化いったことなども複雑に絡み合い影響していると考えられる。

 

 また、昇進・昇格に関する問題として、「女性の管理職登用が進まない」「現管理職の後継者不足」といった点が上位1位と2位にきている。続いて、「昇進・昇格に魅力を感じない者が増えている」「管理職の高齢化の進行と処遇」といったことが挙げられている。一方で昇進昇格は厳格化している傾向にもあるようである。この点からすると、ポスト不足ならぬ、後継者不足の実態が浮かび上がってくる。バブル崩壊後の低成長時代のポスト不足から、今や組織的人材育成機能の弱体化による後継者育成体制の崩壊とでもいうべき事態になっているのではないか。改めて、組織管理者の計画的育成・登用と組織的役割形成メカニズムの再構築が求められているのではないかと考えるものである。

 

 


 

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 株式会社HPT研究所
 代表取締役 伊藤 克彦

 

 

 

1979年 株式会社リクルート入社、人材総合サービス部門で1000社を超える企業の採用、教育、人事処遇に関する業務に従事。その後、映像事業部門でプロデューサーとして教育映像コンテンツ制作他に携わる。

ダイエーの資本参加に伴って福岡ドーム事業に参加。主として法人営業部門を担当。リクルート復職後、広告局長、営業教育事業部門の責任者を経て、2002年独立しHPT研究所を設立、今日にいたる。

専門分野:組織変革、ビジョン・戦略構築、人事制度設計、教育制度設計、研修プログラム開発、マネジメント教育 他
広島大学教育学部(心理学科)卒

 


 

株式会社HPT研究所

経営の実行プロセスである「戦略」「業務」「人事」という3つの領域で、コンサルサービスを提供している。社名のHPTはHuman Performance Technologyの略。 人と組織の行動成果をいかに高め企業業績を向上させるかをテーマに様々な取組みを行っている。

■会社HP http://www.hpt-lab.com

 


 

 

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